HOME >> 交通事故に関係する法律 >> 民法

民法

民法に関して、以下項目を解説しています。
・不法行為責任
・損害賠償の方法及び過失相殺
・損益相殺
・損害賠償請求権の消滅時効

不法行為責任

民法の規定において、交通事故の加害者が負う不法行為責任には、以下条文があります。

損害賠償責任

(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
《解説》
上記条文にある通り『故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者』が損害賠償責任を負うため、交通事故でもこの規定が適用されます。
【交通事故の損害賠償の範囲】
交通事故では、積極損害・消極損害・慰謝料が損害として認められますが、民法には具体的な規定はなく不法行為によって生じた損害として、当然に認められています。また、具体的な損害賠償額の算出方法は規定がなく、過去の裁判例が蓄積された”裁判基準”が、”法律上の損害賠償額”の相場となります。
”裁判基準”については、上記メニュー「Home」にある左記メニュー「損害賠償の基礎知識」を参照下さい。

慰謝料

(財産以外の損害の賠償)
第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
《解説》
上記条文中の『財産以外の損害』が、慰謝料のことです。
慰謝料は、一般的に人身事故については認められますが、物損事故については原則として認められません。
ただし、物損事故でも別段の事情がある場合は、認められる場合もあります。

近親者に対する慰謝料

(近親者に対する損害の賠償)
第711条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
《解説》
死亡事故の場合は、被害者の近親者に対しても慰謝料が認められます。
また、被害者に重度の後遺障害が残る場合も、認められる場合があります。

未成年者の責任能力

(責任能力)
第712条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
《解説》
”責任能力”とは、自己の行為が法律上許されないと判断できる能力のことで、概ね11才〜12才以上の者は責任能力があるとされます。
よって、交通事故の加害者に責任能力がある年齢の場合は、本人が損害賠償責任を負うこととなりますが、未成年者ではその資力がないのが一般的です。
そこで、その者が任意保険に入っていない場合で、十分な損害賠償を受けることが出来ない場合は、民法 第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)を根拠として、その保護者に対する損害賠償請求を検討することとなります。

使用者責任

(使用者等の責任)
第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
《解説》
加害者の業務上、又は、通勤中の事故の場合は、その加害者の勤め先の会社等に対しても、損害賠償請求することができる場合があります。
加害者が任意保険に入っていない場合で、十分な損害賠償を受けることが出来ない場合は、その使用者に対して損害賠償請求をする余地があります。

加害車両が複数の場合

(共同不法行為者の責任)
第719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。
共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
《解説》
加害車両が複数の場合は、加害者側は連帯責任を負います。
よって、被害者は、損害賠償請求をするにあたり、加害者1人に全額を請求するか、又は、各加害者に対して請求することができます。
加害者1人が全額を支払った場合は、その加害者は他の加害者に対して過失分を求償することができます。

損害賠償の方法及び過失相殺

(損害賠償の方法)
第417条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
(損害賠償の方法及び過失相殺)
第722条 第417条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
《解説》
第417条は、債権の債務不履行の責任の規定ですが、不法行為に準用されています。不法行為においては、当事者間にてあらかじめ取り決めがある訳ではないため、金銭による賠償となります。

損益相殺

過失相殺については、第722条 第2項に規定されていますが、損益相殺については民法に規定がありません。
しかし、通説・判例においても当然の事とされ、裁判実務においても損益相殺が行われています。

損害賠償請求権の消滅時効

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
《解説》
この規定により、交通事故の損害賠償請求権は、3年で時効によって消滅します。
ただし、ひき逃げなど被害者が加害者を知ることができない場合は、時効期間は20年となります。

 
inserted by FC2 system