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第三者行為による傷病届

第三者行為による傷病届に関して、以下項目を解説しています。
・第三者行為による傷病届とは?
・届出書の記載事項に要注意
・届出先一覧
・届出用紙の入手方法
・届出書の作成及び提出の代行について

第三者行為による傷病届とは?

交通事故や喧嘩などの第三者の行為で負傷した場合に、医療保険、又は、労災保険で治療を受けるときは、”第三者行為による傷病届”を保険者に提出する必要があります。
交通事故等の第三者の行為で負傷した場合の治療費は、加害者が負担するのが原則ですが、医療保険、又は、労災保険を使用した場合は、保険者が治療費を立て替えて支払い、その後、保険者は、その立て替え分を加害者に請求します。
よって、保険者が、事故の内容を知る必要があるため、この届出が必要となります。
【届出前の注意事項】
”第三者行為による傷病届”の添付資料として、「交通事故証明書」(人身事故)が必要なため、事故発生時に110番にて警察官を呼び、人身事故として届け出る事が必要があります。
また、警察に届け出ても、物損事故にしてしまうと、保険者から治療費負担を受けることができません。

届出書の記載事項に要注意

”第三者行為による傷病届”は、医療保険によってその様式が異なりますが、国民健康保険では、概ね以下の書類から構成されています。
・交通事故による傷病届
・事故発生状況報告書
・念書
・誓約書
そして、とある市町村役場で使われている「念書」には以下の記載があります。
『保険給付額の限度において、自動車損害賠償責任保険金(共済金)を貴職が優先して受領することに異議をのべないこと。』
【この記載の問題点】
この記載のまま届出書を提出してしまうと、市町村役場は医療保険の給付額に相当する額を自賠責保険から受領してしまい、その結果、被害者の自賠責保険の支払限度額が少なくなってしまいます。
例として、傷害の場合は、自賠責保険の支払限度額は120万円ですが、医療保険から20万円支払われた場合は、被害者の自賠責保険の限度額は100万円となります。
【修正案】
念書に記載されている以下の文は、取り消し線(二重線)を引いて訂正印を押印して下さい。
『保険給付額の限度において、自動車損害賠償責任保険金(共済金)を貴職が優先して受領することに異議をのべないこと。』
また、付記事項として、余白部分に以下文章を追記して下さい。
(付記事項)
最高裁判例(平成20年2月19日)に基づき、国保からの給付以外で自賠責保険によって受けられる補償については、市町村長より優先して自賠責保険の保険会社から保険金額の限度で損害賠償額の支払を受ける事をご了承下さい。

修正案の根拠となる判例

上記【修正案】の根拠となる最高裁判例は、以下の通りです。
【最高裁判例(平成20年2月19日)】
《判示事項》
被害者の行使する自賠法16条1項に基づく請求権の額と市町村長が老人保健法(平成17年法律第77号による改正前のもの)41条1項により取得し行使する上記請求権の額の合計額が自動車損害賠償責任保険の保険金額を超える場合に、被害者は市町村長に優先して損害賠償額の支払を受けられるか
《裁判要旨》
交通事故の被害者が、老人保健法(平成17年法律第77号による改正前のもの。以下同じ。)25条1項に基づく医療の給付を受けてもなおてん補されない損害について自賠法16条1項に基づく請求権を行使する場合は、他方で、医療の給付を行った市町村長が、老人保健法41条1項により取得した上記請求権を行使し、被害者の上記請求権の額と市町村長が取得した上記請求権の額の合計額が自動車損害賠償責任保険の保険金額を超えるときであっても、被害者は市町村長に優先して自動車損害賠償責任保険の保険会社から上記保険金額の限度で損害賠償額の支払を受けることができる。
【「損害賠償額算定基準」(赤い本)の記載】
当書においても、上記の最高裁判例を根拠として、被害者は社会保険者に優先して自賠責保険の保険会社から、自賠責保険金額の限度で損害賠償額の支払を受けることができるとしています。

届出先一覧

被害者が加入している医療保険の種類によって、届出先が異なります。
また、労働者の業務上、又は、通勤中の交通事故の場合は、労災保険の対象となり、医療保険は対象外です。

医療保険

医療保険の種類 届出先 対象者
健康保険 健康保険組合 大企業の会社員、扶養家族
同上 全国健康保険協会 中小企業の会社員、扶養家族
船員保険 同上 船員、扶養家族
共済組合 勤め先 公務員、教職員、扶養家族
国民健康保険 市町村役場 自営業者、無職者、扶養家族

労災保険

届出先は、労働基準監督署です。

届出用紙の入手方法

医療保険の種類や届出先によって、所定の用紙が異なるため、上記項目「届出先一覧」の届出先から入手して下さい。
なお、全国健康保険協会と労災保険は、以下サイトよりダウンロードできます。

全国健康保険協会

勤め先に健康保険組合がない場合の健康保険と、船員保険が対象です。
[サイト名]全国健康保険協会(協会けんぽ)
[参照頁]事故にあったとき(第三者行為による傷病届等について)
[リンク先]
(リンク先を左クリックにて、別画面で表示します。)

労災保険

労災保険は、自賠責保険と同時に使用することができません。
詳細については、左記メニュー「労災保険」を参照下さい。
【記入方法の参考サイト】
[サイト名]公益財団法人 労災保険情報センター
[参照メニュー]トップページ下部にある”労災保険の手続き”をクリックし、下部にある”第三者行為災害”を参照
[リンク先]
(リンク先を左クリックにて、別画面で表示します。)
【用紙をダウンロードできるサイト】
[サイト名]厚生労働省・労災保険給付関係請求書等ダウンロード
[リンク先]
(リンク先を左クリックにて、別画面で表示します。)

届出書の作成及び提出の代行について

社会保険・労働保険に対する申請・届出書等の作成は、社会保険労務士の独占業務のため、行政書士が取り扱う事ができません。
例外として、昭和55年9月1日改正法施行時点の行政書士会の入会者である会員(「社労業務経過措置会員」といいます。)は、社会保険・労働保険に対する業務が取り扱えます。
よって、”第三者行為による傷病届”の作成及びその提出の代理は、当事務所では取り扱う事ができない事ご了承下さい。

 
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