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過失相殺と損益相殺の先後関係

過失相殺と損益相殺の先後関係に関して、以下項目を解説しています。
・過失相殺と損益相殺の先後関係による相違
・民事交通事故訴訟における先後関係

過失相殺と損益相殺の先後関係による相違

損害賠償額の算定において、過失相殺と損益相殺のいずれを先にするかによって、加害者に請求する損害賠償額に違いが生じます。
【具体例】
例として、以下の条件で、先後関係の違いを記載します。
被害者の損害額の合計:100万円
被害者の過失割合:50%
損益相殺の利益:30万円
【過失相殺→損益相殺】
100万円×0.5−30=20万円
【損益相殺→過失相殺】
(100万円−30万円)×0.5=35万円
【結果】
損益相殺してから過失相殺した方が損害賠償額が高くなりますが、民事交通事故訴訟においては、以下項目のようになります。

民事交通事故訴訟における先後関係

民事交通事故訴訟における先後関係は、損益相殺する利益の性質によって先後関係が異なります。
損益相殺する利益ごとに、以下解説します。

自賠責保険、加害者の加入する任意保険

過失相殺後に損益相殺します。
これは、本来、加害者が支払うべき賠償金を、保険会社が加害者に代わって支払うためです。

健康保険、国民年金、厚生年金

損益相殺後に過失相殺します。
「損害賠償額算定基準」(赤い本)では、以下のように記載されています。
『損害額から保険給付額を引いた残額に対して過失相殺をする。』

労災保険

「損害賠償額算定基準」(赤い本)では、以下のように記載されています。
『労災保険給付は、被害者の実損害を填補するもので、加害者に対する損害賠償請求権を填補するものではないとして、健康保険と同一の取扱いをする例と、他の損害填補と同様に扱うことが損害賠償法理にかなうものとして、過失相殺後の損害賠償額から控除する例がある。』
備考)
(赤い本)の基準では上記の通りですが、(赤い本)に記載されている判例によると、最高裁判例(平成1年4月11日)や最近の地裁判決では、”過失相殺後の損害賠償額から控除”としています。

 
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